「うちのサイトは大丈夫だろうか」と思いながらも、何をどう確認すればよいかわからない——医療機関の担当者からよく聞く声です。
本記事では、厚生労働省 医療広告ガイドライン(2023年12月改訂版)と同 Q&A に基づいて、クリニック・歯科医院の公式サイトを自己点検するための 74項目チェックリスト をまとめました。
本チェックリストは一次スクリーニング用の参考資料です。個別の判断については医療広告に詳しい弁護士等の専門家にご確認ください。
このチェックリストの使い方
各項目を「問題なし ✅ / 要確認 ⚠️ / 違反の疑い ❌」の3段階で評価します。⚠️以上の項目は専門家への確認または修正を検討してください。
点検範囲はトップページ・診療案内・料金ページ・ブログ・SNS公式アカウントすべてが対象です。「LP(ランディングページ)も出していない」という医療機関でも、公式サイト自体がすべて規制対象になる点に注意してください。
第1章 基本的な禁止事項(絶対NG)
❶ 虚偽広告
客観的に事実でない内容を掲載していると、医療法第6条の5により行政処分・罰則の対象になります。
- 実際には取得していない資格・認定・受賞歴を掲載していない
- 実在しない症例・実績数を掲載していない
- 他院の写真・症例を自院のものとして掲載していない
- 効果が認められていない治療について「確実に治る」等の記載がない
❷ 誇大広告
事実であっても、著しく誇張した表現は誇大広告になります。
- 「必ず」「絶対に」「100%」「完全に」等の断定表現がない
- 「日本一」「最高の」「最良の」等、根拠なき最上級表現がない
- 「痛みゼロ」「ダウンタイムなし」等、個人差を無視した断定がない
- 治療効果について合理的な根拠なく断定的な記述がない
❸ 比較優良広告
他の医療機関との優劣を示す表現は原則禁止です。
- 「No.1」「症例数No.1」「地域一番」等の表記がない(第三者調査に基づく場合でも要注意)
- 「他院より安い」「〇〇クリニックより上手い」等の他院との比較がない
- 「最新機器完備」等、根拠が曖昧なまま他院より優れていることを示唆する表現がない
❹ 患者の体験談・口コミ
限定解除をしていても掲載できません。 これは最も誤解が多いポイントです。
- 「患者様の声」「体験談」コーナーに治療効果を記した患者コメントがない
- SNS投稿のスクリーンショット等、患者の体験コメントを転載していない
- Googleクチコミの内容をサイト内に引用掲載していない
- インフルエンサーや著名人の「この治療を受けました」的コメントを掲載していない
第2章 限定解除の確認
自由診療の費用・ビフォーアフター写真等は、下記4要件をすべて満たした場合のみ掲載できます。いずれか1つでも欠ければ違反です。
詳細は「医療広告ガイドラインの限定解除4要件」をご参照ください。
限定解除4要件のチェック
- 要件① 患者等が自ら求めて入手する情報であることが明確になっている(「詳細はこちら」等のクリックが必要な構造、または要件充足の告知文がある)
- 要件② 費用・リスク・副作用に関する情報が掲載されている
- 要件③ 自由診療の費用を掲載したページには、自由診療である旨と費用が掲載されている
- 要件④ 問い合わせ先(電話番号または連絡先)が掲載されている
限定解除が適用できるページの確認
- 限定解除要件を満たしているページのみにビフォーアフター写真を掲載している
- 術前術後写真に、リスク・副作用の記載が伴っている
- 自由診療の料金表に、費用の目安・変動要因・キャンセル等の注意事項がある
- 症例写真はモニター募集と連携している場合、その旨を明記している
第3章 広告できる事項の確認
医療広告は「広告できる事項が限定列挙されている」点が一般広告と大きく異なります。列挙にない事項は原則として掲載できません。
医師・スタッフ情報
- 医師名、診療科目、診療日時は掲載できる
- 学歴・職歴は事実に基づいて掲載できる
- 「○○学会認定専門医」等の認定資格は、実際に取得しているもののみ掲載できる
- 自由標榜の資格・称号(例:「美容外科専門医(自称)」)を公的専門医と混同させる記述がない
- 取得年が古く現在は失効している資格を現在形で掲載していない
施設・設備情報
- 「〇〇機器導入」は事実であり、最新情報になっている
- 施設の広さ・設備の説明は事実に基づいている
- 受付・待合室の写真は実際の施設のものである
治療内容の記述
- 提供している治療・手術の名称のみを記載し、効果の断定がない
- 治療費用(保険診療分)は正確な金額または目安を記載している
- 「保険適用」「自由診療」の区別が明確になっている
第4章 ウェブサイト特有の注意点
ページ構造・UI
- 限定解除ページへのアクセスは「クリックして表示する」等、積極的な行為が必要な設計になっている(自動表示・スクロールだけで表示される設計は要注意)
- 問い合わせページ・LINEページ等に、誇大・比較表現がない
- ファーストビュー(スクロール不要で見える領域)に特に問題のある表現がない
ブログ・コラム・お知らせ
- 院長・スタッフブログの内容も医療広告の規制対象であることを認識している
- ブログで特定の治療の効果を断定的に記述していない
- コラム記事で他院・他の治療法を不当に貶めていない
- ブログに患者の治療体験を記述した記事がない
メタデータ・タイトルタグ
- ページタイトル(
<title>)に誇大・比較表現がない(Googleの検索結果にも表示されるため) - ディスクリプション(
<meta description>)に「No.1」「必ず」等の表現がない - OGPタイトル・ディスクリプションも同様に確認している
第5章 SNS公式アカウントの確認
クリニックのSNS医療広告も同一のガイドラインが適用されます。
投稿内容
- 治療の効果・結果を断定した投稿がない
- ビフォーアフター写真を、限定解除要件を満たさずに投稿していない
- 患者の体験コメント・リポストを転載・引用していない
- ストーリーズ・リール等の動画コンテンツも同じ基準で確認している
プロフィール・固定投稿
- プロフィール文に比較・誇大表現がない
- 固定投稿に問題のある表現がない
- ハイライトに限定解除なしのビフォーアフターがない
コメント欄・DM
- コメント欄で「治りますか?」等の質問に断定的な回答をしていない
- DMで効果保証のような回答をしていない
第6章 よくある違反パターン早見表
| 違反パターン | NG表現例 | OK方向性 |
|---|---|---|
| 誇大表現 | 「痛みゼロ」「完全に消える」 | 「痛みを抑える工夫をしています」 |
| 最上級表現 | 「地域No.1」「最高の技術」 | 「○○学会認定専門医が担当」 |
| 体験談 | 「〇〇さんの治療体験談」 | 削除一択(限定解除でも不可) |
| 根拠なし数字 | 「満足度98%」 | 根拠となる調査を明示するか削除 |
| 他院比較 | 「他院より安い」 | 自院の料金のみを記載 |
| 断定効果 | 「確実に改善します」 | 「改善が期待できます」(も注意) |
第7章 スコアリングの目安
点検結果を集計して、対応優先度の参考にしてください。
| 区分 | 件数 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| ❌ 違反の疑い | 1件以上 | 即時修正または専門家相談 |
| ⚠️ 要確認 | 5件以上 | 今月中に専門家確認 |
| ⚠️ 要確認 | 1〜4件 | 3ヶ月以内に精査 |
| すべて ✅ | — | 6ヶ月後に再点検 |
定期的な点検が重要な理由
医療機関ネットパトロールによる監視は常時行われており、通報がなくても行政側が違反を検知するケースがあります。またガイドラインは定期的に改訂されるため、過去に問題なかった表現が違反になることもあります。
ホームページのページ数が多い・ブログを定期更新している・SNSを積極活用しているクリニックほど、確認漏れが起きやすい状況にあります。
セルフチェックの限界
このチェックリストは一次スクリーニングとして活用できますが、下記の点に注意してください。
- グレーゾーンの判断は専門家(医療広告に詳しい弁護士等)が必要
- ページ数が多いほどチェック漏れが起きる
- ブログ更新のたびに点検するのは現実的に困難
かかしAI は URL を登録するだけで、全ページを自動的に巡回して違反リスクを検出します。人手では見落としがちなブログ記事・お知らせページ・画像内テキストも含めて定期的にモニタリングするため、手動点検の補完として活用できます。
まとめ
本チェックリストの重要ポイントをまとめます。
- 患者の体験談は限定解除をしても絶対に掲載不可
- 比較・最上級表現は根拠の有無にかかわらず原則禁止
- ブログ・SNS・メタタグもすべて規制対象
- 限定解除の4要件はすべて同時に満たす必要がある
- 定期的な点検体制を整えることが実務上重要
医療広告ガイドラインは「知らなかった」では救済されません。点検体制を整え、継続的に適正化することが、クリニックを行政指導・罰則から守る最善の方法です。