医師紹介ページやスタッフ紹介欄に「○○専門医」という肩書きを載せているクリニックは少なくありません。しかし専門医・認定資格の表記は、医療広告ガイドライン違反の中でも見落とされやすく、かつ検出頻度の高いポイントです。資格名の書き方を一つ間違えるだけで、誇大広告や虚偽広告に該当してしまう可能性があります。

本記事では、厚生労働省 医療広告ガイドライン と、専門性資格の広告可否を具体的に定めた通知に基づき、「言っていいこと」「ダメなこと」を整理します。

専門医資格は「広告可能事項」だが範囲が限定される

医療広告は医療法第6条の5により、広告可能事項が法令で限定列挙されているポジティブリスト方式です。列挙されていない事項は、原則としてどれだけ事実であっても広告できません。

医師・歯科医師の専門性に関する資格(いわゆる専門医)は、このポジティブリストに含まれる項目の一つです。ただし「専門医と名乗れる資格なら何でも広告してよい」わけではなく、実際に広告できる資格名は個別に指定されたものに限られるという、もう一段階の絞り込みがあります。

法令・通知内容
医療法 第6条の5医療広告の規制、広告可能事項のポジティブリスト
医療法施行規則専門性に関する資格を広告可能事項に位置づけ
平成25年5月31日付け医政総発0531第1号通知(広告可能な専門性資格名等について)広告してよい資格名を学会・認定団体単位で個別に指定

つまり、実在する認定資格であっても、この通知に載っていない資格名は通常の広告(パンフレット・看板・チラシ等)では表示できません。医師紹介ページを作る際は、まず「その資格名は通知に載っているか」を確認するのが出発点になります。

表記の絶対ルール:資格名には認定団体名をセットで書く

通知に載っている資格であっても、書き方を誤ると別の違反になります。最も重要なルールは、資格名だけを単独で書かず、どの団体が認定した資格かを必ず併記することです。

⭕ 適合する表記例

  • 「医師○○○○(日本専門医機構認定 ○○専門医)」
  • 「医師○○○○(○○学会認定 ○○専門医)」

❌ 違反となる表記例

表記何が問題か
「厚生労働省認定 ○○専門医」虚偽広告。専門医資格は各学会・日本専門医機構が認定するものであり、厚生労働省が認定・認可する制度ではない
「○○専門医」(認定団体名の記載なし)誇大広告。認定団体を示さずに肩書きだけを掲げると、実態以上に権威付けされた印象を一般人に与えるおそれがある

「厚生労働省認定」は事実に反する記載のため罰則の対象にもなり得る重い違反、「団体名なしの専門医」は誇張表現としての誇大広告に分類される、という違いも押さえておく必要があります。

比較優良広告との境界線

専門医の在籍自体を伝えることは問題ありません。「当院では○○科の専門医が在籍しています」は事実の範囲内の情報提供として許容されます。

ただし、そこに優位性を示す言葉が加わると、比較優良広告に転化するリスクがあります。

表現判定理由
「当院では消化器内科の専門医が在籍しています」事実の範囲内の情報提供
「専門医多数在籍」「専門医が○名在籍」数値自体は事実の記載として許容され得るが、他院との優劣を暗示する文脈での使用は要注意
「県内トップクラスの専門医が揃っています」「トップクラス」が最上級表現・比較優良広告に該当
「専門医だから安心・確実」効果・安全性を保証する誇大広告的な言い回し

資格の保有事実を伝えるのと、資格を根拠に優劣・安全性を演出するのとでは、扱いが大きく変わります。

グレーゾーン:通知に載っていない資格・役員肩書き

通知未記載の新しい専門医資格

日本専門医機構が認定する専門医制度は再編が進んでおり、まだ前述の通知に個別掲載されていない資格名も存在します。この場合、パンフレットや看板などの通常の広告では表示不可というのが現在の整理です。

一方、ウェブサイトについては扱いが異なります。限定解除の4要件(求めて入手する情報であること・問い合わせ先の明記・自由診療等の情報提供・治療のリスク等の情報提供)を満たしていれば、通知に載っていない資格名であっても広告可能となる余地があるとされています。この論点は今後の運用整理が続く分野でもあるため、該当する資格を表示したい場合は、限定解除要件を満たした上での掲載にとどめ、余力があれば個別に確認を取るのが安全です。

学会役員である旨の記載

「○○学会 理事」のような役員肩書きは、現任であれば条件付きで広告可能です。ただし条件として、当該学会のウェブサイト等で活動内容や役員名簿が公開されていることが前提になります。退任後も肩書きを残す、実態確認ができない団体名を使うといった運用は避ける必要があります。

実務チェックリスト

医師紹介ページ・スタッフ紹介ページの点検には、次の手順が実務的です。

  • ページ内の資格表記をすべて洗い出す
  • 各資格名が「広告可能な専門性資格名等について」の通知に掲載されているか確認する
  • 資格名の直後に認定団体名(学会名/日本専門医機構)を必ず併記しているか確認する
  • 「厚生労働省認定」「厚労省認可」といった文言が紛れ込んでいないか確認する
  • 複数資格を並べる場合、2つ目以降で認定団体名の記載を省略していないか確認する(1つ目だけ丁寧に書いて以降を省略するミスが多い)
  • 「トップクラス」「最高峰」等、資格を根拠にした優劣表現が混在していないか確認する

まとめ

  • 専門医資格の広告は、通知(平成25年5月31日付け医政総発0531第1号)に掲載された資格名に限られる
  • 資格名は必ず認定団体名とセットで表記する
  • 「厚生労働省認定」は虚偽広告、団体名なしの「○○専門医」単独表記は誇大広告に該当し得る
  • 資格の保有事実を伝えるのは問題ないが、優劣・安全性を演出する文脈での使用は比較優良広告・誇大広告のリスクを高める

医師紹介ページは開院時に一度作られた後、資格が増えても表記ルールが更新されないまま放置されがちな箇所です。本サイトの自動チェック機能でも、こうした専門医・資格表記の不備を検出してお知らせします。